結構な腕前で!
「え、ほんとに自生してる」

「つか、あれ全部食虫植物かよ。普通でもあんなにわさわさ生えるもんか?」

 食虫植物とはいっても、ハエなどを食べるものではない。
 結構な大きさの魔を食べるのだから、捕まえる葉の部分は大人の手の平覆う大きさだ。
 それが、山の斜面いっぱいに、わっさわっさと生えている。

「で、由梨花はあれを、どうやって活けてるの?」

「どうって?」

「とぼけないでよ。魔を回収する壺の中身は異空間よ。そこに何かを活けるなんて、普通はできないわ」

 花を活ける剣山なども、当然置けない。
 ただ花瓶に挿すだけの生け花もあるが、あの特殊な空間は、何かを入れればすぐに飛ばしてしまう。
 片足を突っ込んだまま留まれるわけはないのだ。

「それが裏流派だって、前言ってたな」

「さすがせとみ様。わたくしの言ったこと、よく覚えてくださってる」

 はるみだってそこはわかっているからこそ、改めて問い質したのだが。

「あの子は活けてるっていうよりは、壺に自生してるっていうか。この辺りの空間は、あの子が作り出してるんだと思うんですの」

 そう言って、由梨花は庭に降りた。
 はるみとせとみは顔を見合わせ、次いですぐ傍で転がっている萌実を見る。

「せとみ、見てきてよ」

「何で俺があいつと一緒に散策しないといけないんだ?」

「だって無防備な萌実さんを一人にしちゃ危ないかもじゃない。それに寝てる子をあんたに任せるのも、道徳的にどうかと思うし」

「こんなところで何するってんだよ」

「わかんないわよ。それに由梨花の気持ちも汲んであげて。普通に考えて、萌実さんとあんたが残るって、いい気分じゃないと思うわよ」

「あいつはそんなこと気にしないとか、さっき言ったじゃねーか」

「馬鹿ねー。だからっていっつもそうとは限らないわよ。ものには限度ってものがあるんだからね」
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