結構な腕前で!
「ちょっとあなたたち。何してらっしゃるのよ。さっさといらっしゃい」

 ぼそぼそと言い合っているはるみとせとみに、由梨花が苛々したように庭先から声をかける。

「はい、今行くわ。ほらせとみ、いってらっしゃい」

 はるみが『せとみ』の部分を強調しつつ、由梨花に返事を寄越した。
 そして、ぐい、とせとみを押す。
 きらきらと目を輝かせて待っている由梨花に、ち、と小さく舌打ちし、せとみはしぶしぶながらも庭に降りた。

「しっかし……」

 庭に降りて、改めて見回してみると、つくづく一市民の家の庭とは思えない。
 広さはもちろん、手入れもばっちり。
 どこぞの由緒ある寺のようだ。

「凄ぇなぁ。こんな庭、誰が手入れしてるんだ?」

 普通は庭師などが入るのだろうが、結構いたるところにあの食虫植物がいる。
 庭の中ほどは大丈夫だろうが、草木が生い茂るのは、やはり端の山に近いほうだ。
 というか、山と庭の境界線というものはないようなので、どこからが庭なのかもよくわからない。

「真行寺家の分家には、代々庭師をしている家がありますの。そこがこの山の手入れを一手に担っているのですわ。普通の庭師には、ちょっと危険ですしねぇ」

「へぇ~。聞けば聞くほど凄ぇな。一族皆が、そういう能力者ってことか?」

「能力があるかどうかは、実のところ、ちょっとわからないのですわ。能力、というほどのものではないですから」

 由梨花の意外な言葉に、せとみがちょっと驚いた顔をする。

「わたくしは、せとみ様の兄上のように、一気に魔を打ち祓う力もありませんし、せとみ様のように大量の大きな魔を相手にできるほどの力もありません。人の中の力を見る力は優れていても、それだって強すぎる力は返って見えないようですし」

 高飛車な由梨花から、このような言葉が出るとは。
 思わずせとみは、まじまじと隣を歩く由梨花を見た。
< 260 / 397 >

この作品をシェア

pagetop