結構な腕前で!
「ここにもやっぱり、結構な魔が出るのね」

「あら、出ましたの?」

「茶道部に出るような、大物だったわ。でも何もしないうちに消えたけど」

「消えた?」

 せとみも由梨花も、訝しげな顔になる。

「あの辺から湧いて出て、萌実さんに向かってきたのよね」

「ええっ!」

 萌実が思い切り引いた。
 呑気に寝ている場合か。

「その子はあの子たちと共鳴して強力な壺になってたのでしょう? そんなものに魔自ら近付くかしら? 華道部では避けてましたわよ?」

 はるみが、ちょっと首を傾げて萌実と食虫植物を見た。
 先の由梨花の言葉の、『その子』が萌実で、『あの子』は食虫植物ということか。
 全くややこしい。

「由梨花。あんた、あれを『あの子』って呼ぶぐらいなら、名前ぐらい付けてあげたら。あんたの言い方じゃ何を指してるのかわかんないわよ」

「一体どれだけいると思ってるの。全員に名前なんて、付けられるわけないでしょう」

「じゃあ萌実さんは名前で呼んで頂戴」

 脱線していく二人をよそに、せとみは部屋の中を見回した。

「魔が出たって……そんなでかいのが出た感じもしないがな」

 はるみが打ち祓ったのであれば、何かしらの残骸があるはずだ。
 基本的に攻撃→回収なので、大きいものほど取りこぼしがある。
 一人ならなおさらだ。

「箒とかがあるわけでもねーし。そんな綺麗に掃除できねーだろ」

「攻撃してないもの」

 ようやく話しを戻し、はるみがまた、萌実に視線を戻した。

「私だって一応いつも武器は持ってるし、明らかにこっちに向かってきたから、こう構えてたのよ。でも魔は、私を素通りして萌実さんに襲い掛かったの」

 青くなる萌実に、皆の視線が集中する。
 萌実はぺたぺたと、己の身体を確かめた。
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