結構な腕前で!
「……何ともない……ですけど」

 うっかり身体に大穴などが開いていたらどうしようかと思ったが、幸い身体を叩いた手が、ずぼ、と背中に突き出ることはなかった。

「そうなのよね……。魔は、萌実さんに触れるか触れないかってところで、すっと掻き消えたのよ。今にして思えば、あの魔はこっちに向かってきたわけじゃなくて、萌実さんに引っ張られたんじゃないかしら」

「なるほど。強力な壺状態だから、自ら魔を吸い込んだってことか」

 壺は掃除機のようなもの、と思ったことを思い出す。
 なるほど、強力な掃除機だから、魔は出現した途端に回収されてしまったわけか。

「……て、いやいや。私、魔を食べたってことですか?」

 納得している場合ではない。
 茶道部クラスの魔は萌実だってよく見ている。
 あんなでかい魔をこの身に吸い込んだというのか。
 大丈夫なのか。

「萌実さんは魔を食べても大丈夫だって、せとかも言ってたじゃない。元々内の力が強いんだし。歩く壺よ?」

「嬉しくないです。大体魔って何なんです。そんなもの身体に取り込んでちゃ、何らかの悪影響が出るんじゃないですか?」

 覚えてない分、身体の中身が気になってしょうがない。

「それだけ凄い力を持っているのに、魔に関することを何も知らないっていうのも、おかしな話ですわね。わたくしたちは、お家が元々そういうものを引き継いでますのに」

「そうね。力の系統としては、由梨花のほうに近いのかしら」

「橘家のほうでしょう」

 うーん、と三人は顔を見合わせ何かを考え込む。
 一人、萌実だけがついていけずに取り残されている。

「こういう細かい説明は、せとかのほうが得意なのよね」

「でもあいつ、ここに来たら死ぬぜ」

「全くもってひ弱な男だこと」

 そういう問題ではない。
 う~ん、と頭を悩ませた結果、せとみが代表して口を開いた。
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