結構な腕前で!
「私が山に足を踏み入れたのは、ただ茶道部に入部するためですっ。別に変な感じも受けなかったし」

「そもそも、どうして茶道部になんか入ろうと思ったのです。あなた、茶道の心得があったわけでもないのではなくて?」

「う、そ、それは……」

 赤くなって口ごもる。
 ここにいる全員に、萌実がせとか狙いだということはバレているが、さすがに自ら皆の前でそのようなことを宣言する勇気はない。
 だが。

「萌実さんは、せとかを追ってきたんだものね」

 さらっとはるみに暴露される。
 ぎゃ、と思ったのも束の間、驚く者は誰一人いず、ああ、そうだったね、と流される。
 ふと、例えばこの場にせとか本人がいたところで、同じように特別な反応なく流されたような気がし、萌実は一人落ち込んだ。

「というより、あの根暗部長を追って、というところからして普通じゃないでしょう。学年も違うあなたが、あの人の存在を知り得たというところが、もう魔に引っ張られてる証拠ですわ」

「え、いやあの。せとか先輩は魔でも座敷童でもないですよ。普通に人に見える人間ですから」

「黙らっしゃい。同じクラスの人間からも存在を認識されていないような人なのよ? そんな妖怪を、何故学年も違うあなたが認識できるというのです。奴の魔に通じる空気を感知したからに決まってますでしょ」

 まるでせとかは人間ではないというような物言いだ。
 あんまりだ、と絶句した萌実だが、ふと引っかかるものを感じ、由梨花を見た。

「あの、先輩。せとか先輩の、魔に通じる空気って何です?」

 まさか本当にせとかは人ではないと言うのか。

「あれだけ幼少の頃から魔と対峙していれば、人とは違う空気を持つものですわ。あなたの感知能力で、大方それを見抜いただけのことでしょう」
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