結構な腕前で!
 何となくほのぼのしていると、不意にぱし、と由梨花が扇を畳に叩きつけた。

「ちょっと。何をこそこそ話してますの。問題はまだ何も解決してませんのよっ」

「あ……えっと、何の話でしたかね」

 大きく話が逸れたので、元の話題を忘れてしまった。
 叱ったものの、由梨花も少し首を傾げる。

「せとみ様が、いかに素敵か……」

「それは違う」

 ばさりとはるみがぶった切る。

「……萌実ちゃんと、真行寺家……というか、あの植物の関係だな」

 ぼそ、とせとみが軌道を修正した。
 これまた珍しいことだ。
 直近の話題には戻りたくないのだろう。

「ああ、そうそう。う~ん、でもわたくし、庶民に血縁はいないはずなのですけども。あなた、捨て子だったりするの?」

「何てこと言うんですか。ちゃんと今の両親から生まれてます」

「そうよね。わたくしの親戚にも、そんな子供を捨てた人なんていませんもの」

 う~ん、と考えた後、由梨花は思いついたように、じいぃ~っと萌実を見た。

「関係性はとりあえず置いておいて。あなた、今ははっきり目が開いているわね? あんなに寝てたのに、何故起きたの?」

「そうよ。萌実さん、私が叩いても蹴っても起きなかったわよ? なのに、魔が消えた途端に、ぱっちりと目が開くってどういうこと?」

 はた、とはるみも気付いたように、由梨花に続いた。
 萌実は微妙な顔ではるみを見上げる。
 少し身体が痛いと思ったのは、気のせいではなかったようだ。

「身体の中が空っぽすぎたってことかしら」

「でもご飯食べたら普通は眠くなるわよ?」

「意識は戻るのかもしれませんわよ。普通の食事じゃないのだし」

 由梨花とはるみの会話を、何のことやらわからないまま聞いていた萌実だが、何となく萌実的には認めたくない内容のような。
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