結構な腕前で!
 何のことか確かめたくない気がするが、恐る恐る、萌実は口を開いた。

「あの~……。もしかして、先輩たちは、私が魔を食らった……とか言ってます?」

 確かにせとかにも、萌実は魔を食べても大丈夫だと言われている。
 だが、だからといってあんなもの、食べる気にはならない。
 焼いてもないのに。

「食べた……というのは違うかもしれないけど。吸収されたって言ったほうがいいかしら?」

「壺であれば、そうかもしれませんわね。あの子たちは食べますけども」

「でもあの植物自体が、亜空間に通じてるんじゃないの? だったらまさに、萌実さんはあの植物の擬人化ってことかしらね」

 ぽん、と手を叩いて、はるみが言う。
 なるほど、そうだったのか! とでも言いたそうだが、言われたこちらは聞き捨てならない。

「私はちゃんと人間ですよぅ! 何なんですか、食虫植物の擬人化って!!」

 泣き出す勢いで言うと、ようやくはるみは、ごめんごめん、と謝った。

「つまり、萌実ちゃんはあの植物が多いほど、魔を駆除する力が強くなるってことか。多分、現れた魔を片っ端から吸い取る勢いなんだろうな。寝てたのは、空間が力を発動してなかったからじゃないか? 魔が現れて、空間が魔を凄い力で取り込もうとしたら、身体に何らかの影響があるんだろう。今回は、それで目覚めたんじゃないか?」

「蟻地獄やブラックホールのようね」

 せとみの真面目な解説に、はるみが合いの手を入れるが、やはりどう気を付けてもいい表現が出てこない。

「華道部では、あの植物の影響がまだ弱いから、湧き出た魔を吸い取るまでには至らなかったんだろう。そりゃあ魔も避けるよな。下手したら吸い込まれるんだから」

 今日のせとみは冴えている、と唯一まともな説明をしてくれる彼を、萌実はありがたく思った。
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