結構な腕前で!
「あれ、早いな、真行寺」

 萌実が着替えてきたときに、丁度せとみが袋を下げて入ってきた。
 そして茶室にいる由梨花を見て、少し驚いた顔をする。

「せとみ様のお召しとあらば、わたくし自ら登山することも、やぶさかではありませんわよ」

「召したわけじゃねぇけど……。でもま、それ持ってこれんのは、あんただけかもだし」

 そう言って、せとみは奥の更衣室から出てきたはるみに、持っていた袋を渡した。

「あら珍しい。ケーキじゃない」

「そこのケーキは和風だから、別にいいだろ。何人になるかわからんかったし」

 今日のお茶菓子は和風抹茶栗ケーキ。
 せとみはそれを、ホールで買ってきたようだ。

「まぁいいけど。切らなきゃじゃない」

「僕はそのままでもいいんですけど」

「駄目よせとか。ホールケーキってのは、そのまま食べるもんじゃないの。ていうか、普通はホール食いなんてできないの」

「ホールの一欠片なんて、ちょっとした虫養いにしかならないですけど」

「今日は我慢して頂戴」

 不満げなせとかをぴしゃりと切り、はるみはケーキを持って台所へ。
 萌実も手伝うべく、はるみの後を追った。

「う~んと、六人……? あ、七人か。由梨花のお付きもいたわね」

 奇数だと切りにくい、とケーキを箱から出して言うはるみの手元を、萌実はじ、と見た。
 ホールケーキは結構な大きさだ。
 八等分で丁度いい。
 が、せとかはこれを一人で食べられるのか。

「ああ、まぁお好み焼きの量から言ったら、それぐらい食べられるのかな」

 食事とスイーツはまた違うような気がするが。
 萌実が一人呟くと、はるみが、ケーキに包丁を入れながら答えた。

「そうねぇ。でもせとかも、これ一個はさすがに多いんじゃないかしら。それでも『ちょっと多い』程度だろうけどね。せとかの大食いは、体調に凄く左右されるのよ」

「え、そうなんですか?」
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