結構な腕前で!
 部室では、せとかの罵声(?)が響いていた。

「何ですかっ! この壺は! 前の穢れがついたままですよ!」

「お茶のお点前も酷いものです! こんなお茶、お客様に出せると思うのですか!」

 びしばし、と扇で畳を叩きながら、せとかが前に座るはるかを叱りつける。
 ちなみに土門は、廊下の雑巾がけのあとは庭(というか単に外)の掃除に精を出している。

「全く! 色恋にかまけてさぼりまくるからですよ! 土門はまぁ柔道部の期待の星ですし、こちらが疎かになっても多少は許しましょう。でもあなたは別に柔道部とは何の関係もないはずです! うちの部が担う役目を忘れるようなら、そんな者はいりませんよ」

 ばし! と畳を叩き、最後に大きく息を吐いて、せとかが言った。
 こんなに怒ったせとかを萌実が見たのは初めてだが、そういえば以前から、せとかが怒ったら怖い、とはるみたちが言っていた。
 怒られているはるかは、前でひたすら小さくなっている。

「はい、それぐらいにしておいてあげて。あんまり怒ったら、萌実さんが委縮してしまうわよ。それでなくても今日は女性が多いんだからね」

 はるみが張り詰めた空気を破るように明るく言い、せとかの横にケーキの盆を置く。

「女性が多いのは関係ないです。……まぁ南野さんが委縮してしまうのはちょっと……」

 後半はぶつぶつと言い、せとかははるみから皿を受け取った。

「でも壺を疎かにするなど言語道断です」

 きちんと皿を膝先に置いてから、再びせとかは、びし! と扇を畳に叩きつけた。
 それに上座の床の間の前で、持ち込んだ食虫植物を活けていた由梨花が同意する。

「その点に関しては同意見ですわ。ましてここは魔の本拠地でしょう。そこでいい加減な壺を使ってごらんなさい。下手すると大変なことになりますわ」

 由梨花の言葉に、但馬が大きく頷き、必要以上に肯定の意を示す。
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