結構な腕前で!
「何だよ」

「いーえ。大体わたくしがせとみ様を見るのは、今に始まったことではありませんでしょ」

 しれっと言い、由梨花は但馬に命じて運び込ませた大きな花器に、食虫植物を活けていく。
 ……花器は一抱えもあるような壺なのだが、これを但馬は担いできたのだろうか。

「これって名前はあんのか?」

 由梨花の手元を見ながら、せとみが言う。

「形状からしてハエトリグサの一種なんでしょうけどね。残念ながら、魔を食べるなんて植物は図鑑にも載ってませんし。わたくしは、びーちゃんと呼んだりしますわよ」

「びーちゃん?」

「ビーナス フライトラップ。ハエトリグサの英名ですわ」

「へぇ。なかなか格好良い名前持ってんだな」

 せとみは膝立ちで由梨花の後ろから花器の中を注意深く観察した。
 初めは花器の中は普通の空洞なだけだった。
 どのタイミングで亜空間になるのか。
 はるかやはるみのように、手を突っ込んで空間を作っている風もない。

「……せとみ様。そんなに覗き込まれると、わたくしでも緊張してしまいますわ」

 気付けばせとみは、相当由梨花に近付いている。
 花器が大きいとはいえ、びーちゃんの葉っぱも結構でかいのだ。
 花器の中を見ようとすると、どうしても顔を近付けることになる。」

「何考えてやがる。あんたが壺を、どう作るのかを見たいだけだよ」

 渋い顔をしつつ、せとみは前のめりになっていた身体を起こした。
 その様子を、はるみが興味深そうに眺める。

「大分せとみも打ち解けたようね。まともに話をするようになったし」

「打ち解けたというよりは、真行寺先輩の態度がまともになっただけじゃないですか?」

「由梨花の変人っぷりがなくなるのは、つまらないんだけど」

「いや、態度が若干まともになっても、やっぱり変なところはありますよ」

 ぼそぼそ、とはるみと萌実が話していると、せとかが、しゃくしゃくとお茶を点てながら口を挟んだ。

「良い傾向ではありますね。あまり真行寺さんには、ここに来て欲しくはありませんが」
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