結構な腕前で!
「そういやせとか、発作は大丈夫なの?」

 初めは袖で鼻と口を押えていたが、今は普通だ。
 眼鏡はしているが。

「ええ、意外に。あの植物のお陰もあると思いますが、南野さんのお陰ですかね」

「私?」

「あの食虫植物に、南野さんは共鳴するでしょう? それで、いつも以上に空気が綺麗になってるんだと思います」

「でも華道部でも条件は同じでしたよ? でも先輩、近付いただけで、えらいことになってましたよね?」

「全然違いますよ。華道部には花が溢れてるじゃないですか。あそこまで花粉だらけだと、さすがに南野さんがいても、おっつかないでしょう」

 萌実の前に点てた茶を置き、せとかが言う。
 褒められているはずなのだが、何か空気清浄機的な位置づけのような。

「あの植物と、南野さんが揃ってこその浄化作用でしょうね。共鳴が強ければ強いほど、南野さんは強力な掃除機になる、ということでしょう」

「あんまり嬉しくないんですけど」

「でも少なくとも、魔の根本をどうにかするまでは、あの植物はあったほうがいいと思うんですよ」

 せとかが、床の間を見た。
 ようやく由梨花がびーちゃんを活け終わり、但馬がそれを床の間に運んでいる。

「ご苦労様。どうぞ、一服してください」

 せとかが点てたお茶を、はるみが盆に載せて由梨花の傍に運ぶ。
 由梨花はそこから動くな、ということだ。

「お茶は結構ですけどね。お茶菓子として、ケーキはどうなのかしら」

 茶碗を手に取り、由梨花が同じく差し出されたケーキを見て言う。

「お菓子は基本的に、せとみ担当なのでね。僕に文句を言われても困りますが」

 にこりと笑うせとかに、由梨花は口を噤んだ。
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