結構な腕前で!
「真行寺家に、こういう文献があって、その植物の管理もしている。初代神の子が亡くなったという山に住んでいる、というところからして、真行寺一族は、神の子を生贄にする役目を担ってきたのかもしれませんね」

「じゃあ、俺らとは敵対関係にあるってことか」

「それはどうでしょう」

 ぱん、と書物を閉じ、せとかはそれを、びーちゃんに差し出した。
 書物が葉っぱに触れた途端、びーちゃんは、ぱくっと書物に食い付く。

「神の子を贄にしたのは初代でしょう。何せ時代が時代です。何か起こればとにかく贄の時代ですよ。それは責められたことではありません」

 がじがじと書物を噛むびーちゃんを眺めながら、せとかが冷静に言う。
 が、その冷静さに、持った書物でびーちゃんと遊んでいる(多分)という行動が伴わない。
 こういうところが変人なんだよな、と、せとみは再びため息をついた。

「贄を贈る、という習慣は、結構最近まであったのですよ。今でもどこかの国ではあるでしょうし。まぁ最近といっても、数百年は経ちますが」

「考えてみれば、そういう習慣がなくなった近代の、初めての神の子が萌実ちゃんっていうぐらいなんだな」

「そういうことです。いくら本当に効果のある贄だとしても、今の時代にそんなことをすると大事になりますよ。死体に損傷がなくても、いきなり行方不明になった挙句に、ある日死体で見つかることになりますからね」

「やっぱり身体は残るのかな」

「どうでしょう? どっちにしろ行方不明にはなるわけです。学生ですし、いろいろ面倒ですよ。今の捜査技術をナメたら痛い目に遭いますからね。南野さんに関しては、古来の方法は採らないでしょう」

 何となく犯罪の相談をしているようだ。
 事実、人ひとりの命がかかっていると言えなくもない。
 せとみは相変わらずびーちゃんと遊ぶせとかを見た。

「この植物は、神の子の遺体からできたもののようですよ。身体が崩れてそうなったのか、はたまた身体から生えたのかはわかりませんがね。初代神の子が亡くなったときに、この植物が蔓延った」
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