結構な腕前で!
「何だよ、知ったようなこと言いやがって。お前こそ、そういうことに疎そうなくせに」

「……まぁ基本的に、人に興味はありませんけどね……」

 そう言いながらも、せとかは、ふふふ、と意味ありげに笑う。

「……なぁ、お前、彼女とかいないよな」

 何となく不安になって聞いてみる。
 せとかには浮いた噂の一つもない。

「いませんよ。せとみはその点、その気になればすぐにできますね」

「真行寺か?」

「そうです。向こうが好いてくれているのですから、楽ちんでしょう?」

「好いてくれりゃ誰でもいいってもんじゃねぇよ」

「もっともです」

 言いながら、せとみはせとかを窺った。
 せとかは萌実の気持ちに気付いているのだろうか。
 結構あからさまだから、わかりやすいと思うのだが。

 相手から好いてくれれば楽だとか、でも誰でもいいわけではない、に、やけに同調する辺り、せとかは萌実には興味なし、ということか?

「お前の好みって、どういう子なんだよ」

 そういう話はしたことがない。
 男兄弟など、そんなものだと思うが、今まで女子の影が微塵もなかったので、少し興味本位で聞いてみた。
 せとかは少し考え、扇をつい、と差し出す。

「こういう子でしょうか」

 差し出された扇に、またもびーちゃんが喜んで食い付く。
 せとみが若干引いた。

「そんな何にでも食い付く奴がいいのか」

「面白いじゃないですか。慣れれば可愛いもんですよ」

「そいつを可愛いと思うのなら、やっぱり真行寺と合うと思うよ」

「嫌です。奴はこれよりも強烈ですよ。扇一本であしらえるような奴ではないでしょう。上からなのも気に食わない。まぁ鼻っ柱の折り甲斐はありそうですが」

 何となく、せとかの変人っぷりとドSっぷりを確認しただけのような。
 聞くんじゃなかった、と後悔しながら、せとみは自室へと引き上げた。
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