結構な腕前で!
第三十一章
「……ということで、南野さんは魔の贄の役割を担ってきたわけです」

 次の日の部室には、重苦しい空気が漂っていた。
 せとかの説明がひと段落したところで、さらに重たい沈黙が落ちた。
 その重たい空気の源、萌実は青い顔でふるふる震えている。

「なぁるほど。じゃ、その子をどこかに閉じ込めて、びーちゃんを放り込めば、この鬱陶しい魔たちも一掃できるってわけですのね。但馬!」

 由梨花の命を受け、但馬がすさっと萌実に近付き、後ろから羽交い絞めにする。

「うちの山の頂上にでも捨ててらっしゃい」

「ぎゃーーー!! 何すんのーーーっ!!」

 ずるずると但馬に引きずられ、萌実が悲鳴を上げる。
 この但馬という男も大概だ。

「まぁまぁお待ちなさい。行方不明になった南野さんが、あなたの家の山で見つかったら、いらぬ詮索をされますよ。あなたがせとみをつけ回しているのは周知の事実ですし、せとみと親しい後輩にやきもちを妬いたが故の犯行、とされるのがオチでしょうねぇ。安っぽい痴情の縺れってやつですか」

 やんわりでもなく、せとかが助け舟を出す。
 はたしてこれが助け舟になるのかは疑問だが。
 逆に由梨花の神経を逆撫でしかねない。

「ちょっと。何ですの、その物言い。つけ回すだなんて失礼ですわ」

「他にどのような言い回しが? ストーキングとかですかね?」

「失礼な男ですわねっ!」

「はいはい、そこまで~」

 きいぃっと噛みつく由梨花と、煽るせとかに間に、はるみが割って入った。

「全く二人とも、いい加減にして頂戴。話が進まないったら」

「そうよ。状況を考えて頂戴。萌実さんの一大事なのよ」

「「可愛い後輩をみすみす危険に晒すわけにはいかないでしょ~」」

 久々のハモリ。
 それにしても、萌実以外の、この緊張感のなさといったら。
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