結構な腕前で!
 すっかり暗くなった道を、萌実ははるみと歩いていた。
 男は淑女(?)を守るべき、という由梨花に、何故かせとかもせとみも掻っ攫われた。
 いくらもう日が沈んだとはいえ、由梨花には但馬がいるだろうに。

 そしてこれまた何故か、土門は含まれていない。
 お嬢様には男臭い男は必要ないらしい。
 はっきり言って、守るという点では、土門が一番適任なのだが。

 ということで、土門はいつものようにはるかと帰り、残された萌実とはるみが一緒に帰っているというわけだ。

「せとみはともかく、せとかまで連れて行くことないじゃんね」

 はるみがぶちぶちと文句を言う。
 折角せとかが自ら萌実の不安を拭い去ってくれたというのに、最後の最後でまた落とされた。
 萌実は重い足取りで、はるみの後ろに続いた。

「やっぱり真行寺先輩は、せとか先輩にターゲットを移したんでしょうか」

 どよ~んとした空気を纏いつつ萌実が言うと、いきなりはるみが、目の前で、ぱん! と手を打ち鳴らした。

「駄目よ、そんな良くない空気を醸し出してちゃ。魔が寄ってくるわ」

「え、そうなんですか?」

「今日の話で、何となく萌実さんは、魔の好む気を持ってるんじゃないかと思ってね」

 うげ、と萌実の顔が強張る。

「ていうか、私たち、ああいう魔を狩る者っていうのは、ある程度そうなんじゃないかしら。でないとあれほど魔と出会うこともないだろうし」

「あ、なるほど。私じゃなくても、引き寄せられるってことですか」

「ある程度はね。ある程度は、私たちも引き寄せる力があると思う。見えるだけだったら、こうも慣れるほど魔の相手はしてないわ」

 なるほど。
 いくら力があっても、一般人と変わらなければ、そんなに魔と戦う機会もない。

 いくらここが古戦場跡とはいえ、一般生徒は普通に生活できている。
 茶道部にばかり魔が現れるのは、自然と呼び寄せているのもあるのだ。
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