結構な腕前で!
「道場の罠を考えてもそうでしょ。私たちの気を仕掛けるんだから」

「そうですよね。壺を作るっていう点では、私もはるみ先輩も変わりませんもんね」

「そうね。私たちの力の物凄い版が、萌実さんってことね」

 そんな強い力があっても、魔を蹴散らすどころか餌になるしかないのか。
 今まで何事もなく暮らしてきたのに、ここにきて怒涛の展開だ。

 魔の本拠地である(らしい)部室のある山に入り込んだことで、力が引き出されてしまったのか。
 同じような力の持ち主であるせとかたちに近付いたことも、魔を呼び出すだけでなく、萌実自身の力を誘発する要因だったのかもしれない。

「私がせとか先輩に惹かれなければ、魔が多くなることもなく、私も魔に狙われることなく平穏無事に暮らすことができたんでしょうか」

 萌実が言うと、はるみは振り返って、首を傾げた。

「それはどうかしら。初めにせとかだったか、せとみだったか忘れたけど、どっちかが言ったでしょ、萌実さんが茶道部に入ったのは必然だって。まぁせとかに惹かれてっていうのは偶然だと思うけどね」

「何でですか?」

「だって普通、あの二人だったら、せとみのほうに惹かれない? 顔は一緒といえば一緒だけど、雰囲気がまるで違うでしょ。ノリは軽いけど明るいし、何考えてんだかわからないような、ぼーっとしたせとかよりは、せとみのほうが楽しいでしょ。いくらせとかの持つ魔に通じる気配に気付いたからって、クラスメイトにも認識されないようなせとかを覚えてられる人なんていないよ、普通は」

「それ、前にも言われましたけど。私は先輩を好いてるわけではないってことですかね」

「それは違うと思う。たまたませとかを見つけたのは魔のお陰かもしれないけど、ただ目に入っただけじゃ、何とも思わなかったら一瞬で忘れるんだって。何といってもせとかだもの」

「何なんですかね、その、せとか先輩の存在感のなさは」

「それもね、魔に関りがあると思うの」

 はるみは歩き出しながら、すっかり日の沈んだ空を見上げた。
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