結構な腕前で!
「このときぶつかった武将というのは、よほど仲が悪い者同士だったのでしょうねぇ。残党狩りは往々にして行われるものですが、恨みが深いほど残虐になります。荒木村重とかも、一族がことごとく殺されてますし」

 歴史に詳しくない萌実は、名前を出されたところでぴんとこない。
 曖昧に頷くに留めた。

「けどそんな目に遭った人は、珍しくないってことですよね? なのに何でここだけやたら魔に好かれるんです?」

「ここは有名な人物が討たれたわけではない分、その後の処理もなおざりだったのでしょう。普通古戦場跡というのは、碑があったりして供養されるものです。でもここは何もない。地元の人間でも土地のことを知っているかどうか」

「供養って大事なんですねぇ」

「そうですねぇ。考え方次第、とも言いますが。本人たちにその気がなくても、魔の元に取り込まれたら、それこそ気の毒です」

「魔の元」

「人の霊が皆魔になるわけではないですよ。元々魔と霊は別物です。魔が、霊を取り込んで、形を成すっていうんですかねぇ」

「それは眠ってる者にしたら、迷惑な話ですねぇ」

 とすると、萌実たちのやっていることは、供養の一環になるのだろうか。
 そう思えばやる気も出る。

「ところで先輩」

 いい加減息も上がってきた。
 だから私は運動部に入ったわけじゃなく、茶道部に入ったんだっつーの、と、この数か月、何度も思ったことを心の中で繰り返す。

「今日は何で登山なんですか?」

「おや、南野さんは、これが爽やか登山だと仰る」

「いや、爽やかとは言ってません」

 萌実の突っ込みを無視し、せとかは足を止めて、じ、と萌実を見た。

「何か感じません?」

「やめてください」

 今までの流れから、そっち系のことを言っているに違いない。
 別にまだ暗くはないが、真昼間でもない。
 夕方もヤバいというではないか。
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