結構な腕前で!
「し、しょうがねぇだろ。お前はどうなるかわからねぇし、萌実ちゃんは危険だし。はるかとはるみは行きたがらねぇし」

「行きたがらないなんて単なる我が儘ですよ。それを許すせとみではないはずですが」

「あいつらだけじゃ、真行寺が言うこと聞いてくれるかどうかだろ。結構重要文献なんだし、はるみはともかく、はるかなんて仲良くもねぇしな」

「おや、自分は仲良しだと思っているのですか。真行寺さんの恋慕の情を利用してまで、南野さんのために動いたわけですか?」

 う、とまたせとみが口を噤んだ。
 が、しばし考え、首を捻る。

「ん? ちょっと待て。そりゃ、俺の言うことだったら聞いてくれるかも、とは思ったよ。でも本気で嫌だったら、萌実ちゃんには悪いけど、そんなことしねぇよ」

 つ、と、びーちゃんから扇を取り上げて、せとかが顔を上げる。
 びーちゃんが残念そうに、わささ、と揺れた。
 植物なので、そんな感情ないとは思うのだが、そう思えてしまうほど、びーちゃんはせとかに懐いているような。

「おやおや、せとみは南野さんよりも真行寺さんを優先するわけですか。はるかの読みは外れたってことですかねぇ」

「優先とか、そういうんじゃねぇよ。人の気持ちを利用するなんて最低だろ」

「せとみは優しいですからねぇ。僕なら必要であればやりますが」

 さらりと言う。
 せとみは大きくため息をついた。

 こういうせとかの冷淡さは、せとみにはない。
 あまり人の気持ちを考えないというのだろうか。
 せとかには、そういうところがある。

 反対に、せとみは優しい、というよりは多情というか。
 人に構いすぎて、自分の気持ちがわからなくなるタイプだ。
 双子のくせに、両極端な兄弟なのである。
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