結構な腕前で!
「まぁせとみが真行寺さんに興味を持ったのは良しとしましょう」

「そ、そういうんじゃ……」

「ない、とでも?」

 ずい、と言われ、せとみは口をぱくつかせる。

「良いことですよ。はるかは彼氏ができたようですし、真行寺さんだって、せとみと付き合えば大人しくなるやもしれません」

「お前はやっぱり、どうあってもはるかのことは諦めろって言うんだな」

「そうですね。身近にドロドロはいらないです。それ以前に、はるかにはこれっぽっちもせとみへの気持ちがありませんし」

 ずばんと無慈悲にせとみの心を打ち砕く。
 その通りだとしても、もうちょっと言い方があるだろうに。

「せとみもね、誰彼構わず構ってないで、真剣に一人と向き合いなさい。いろんな人に愛想を振り撒くのって疲れませんか?」

「愛想振り撒いてるつもりはねぇけどな。仲良くするに越したことはないだろ」

「仲良くなりすぎたら、好きかどうかがわからなくなりません?」

「それぐらいわかる……と思うけど。でもそうでもないかもな」

 珍しく、せとみが自信なさげに小さく言う。

「せとみは昔から、常に傍に誰かいたから、寂しがりなんですね」

「馬鹿にしてんのか?」

「いえいえ、別に悪いことじゃないですよ。せとみの性格にもよるものですし。甘え上手で人懐っこかったから、自然と皆集まってきてましたし。ずっとそうだったので、常に傍にいてくれる人に惹かれたのでしょう」

「そうなのかな」

「とはいえ、その傍にいるってのは家が隣で、且つ親戚という物理的な距離によるだけですよ。特別な感情ではないと思います」

「何か俺よりお前のほうが、俺のことわかってるな」

「双子ですから」

 ふふふ、と笑い、せとかはまた、扇をびーちゃんに差し出した。
 双子だから、と言うが、せとみにはせとかの心はわからない。

 考えてみれば、せとかの言う通り、小さい頃から何かと周りの人間に構われるのはせとみのほうだった。
 それはせとみ自身が自ら歩み寄った結果でもあるのだが、元々人の輪に入るのは苦ではなかった。
 常に人の輪の中にいたので、一人は苦手だ。
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