結構な腕前で!
「なるほど~。てことは、やっぱりこの山が元凶なのね?」

「それは間違いないと思います。ただこの山の、どこが魔の湧く場所なのか。いっそのこと、山ごと吹き飛ばしてやろうかとも思いますが」

「やめてよ。後で魔を回収するのが大変だわ」

 どこまで本気なんだかわからないせとかに突っ込み、はるみは床の間に目をやった。
 そこには華道部同様、びーちゃんが活けられた大きめの花瓶がある。

「萌実さんが、ここで眠くならないのは、華道部よりも魔の勢力が強いからかしら」

「おそらく。あれも本来、南野さんよりも魔に反応するものですから。南野さんよりも、魔に興味を示しているのでしょう」

「……せとか、しっかりして。あれは植物。動物じゃないのよ」

 はるみが、若干冷たい目をせとかに向ける。
 せとみも渋い顔で、ぽんぽんとせとかの肩を叩いた。

「せとかがあれを可愛がってるのはわかるがな、あれは植物。感情はないよ」

「わからないですよ。花だって、話しかけたほうが綺麗に咲くっていうじゃないですか。あれだって遊んでやったら喜んでますよ」

「俺はお前の、そういうところが心配だ」

 せとみがため息をつく。
 はるみが、こそりと萌実に耳打ちした。

「萌実さん、いいの? あれで。見ての通りの変態よ?」

「へ、変かもしれないですけど、変態じゃないです。変人って言ってください」

 フォローにならないフォローを入れる萌実に、はるみはきょとんとした。
 何となく、変態よりも変人のほうがまだマシだ。

 変態は救いようのない感じ。
 変人は、ちょっと変わった人、という違いがある。
 あくまで萌実の中では、かもしれないが。

「まぁ変人とわかってても好いてくれるのは、萌実さんぐらいでしょうしね」

 ぷぷ、と笑いながら、はるみが言う。
 そんなに言うほど変人ではない、と思いたいが、声を大にして言い切れる自信はない。
 変人を好きになる時点で、自分も変なのかと、萌実は若干落ち込んだ。
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