結構な腕前で!
「で、そうそう。萌実ちゃんと、山を探してみたんだろ? どうだった?」

 ようやく話が元に戻る。
 せとかが、ああ、と萌実を見た。

「散策としては面白かったですが。そういえば、魔に会いませんでしたね」

 ふと、せとかが気付いたように言った。
 そういえば、この茶室でも魔がばんばん現れるのに、実際の戦跡の場所には何もいなかった。

「おかしいですね。普通の帰り道でも会ったりするのに」

 萌実もようやく、あのとき合わなかったのがいかにおかしいかを悟った。

「山の魔は、もしかして軒並み倒しちゃったとか?」

「いや、それはない。いつもの俺たちの攻撃で一掃できるのなら、多分こんなに能力者が引き寄せられることもないはずだ。俺たちの力に合わせて、魔も増えた。そんなあっさり掃除できるわけないだろ」

 皆、しん、と静まり返る。
 せとみの言う通り、考えてみれば萌実が入部してから魔が多くなった。

 それは以前にせとかも言っていたことだ。
 つまり、こちら側の力が強くなると、魔もそれに合わせて行動する、ということではないのか。

 が、ここのところ魔が大人しいのは、こちらの力、とりわけ萌実の力を恐れてのことかもしれない。
 この力は今までの者と違う、と悟り、大人しくしているのではないだろうか。

「で、でも。そうだとしたら、いいことじゃない? 何もしなくても、魔が大人しくなったってことでしょ?」

 はるかが重い空気を振り払うように言うが、せとかは難しい顔のまま首を振った。

「いつまでもこの状態が続くとは思えません。魔が増え、僕らのような者が現れたら、必ず一旦リセットされてきたんです。人間側の神の子の死をもって、魔を消滅させてきた。能力者が現れるのは、魔が飽和状態になったときなんでしょう。ここで何とかしないと、魔が溢れだすのだと思います」
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