結構な腕前で!
「魔は引き下がったわけじゃない。機会を窺ってんのさ。そのうち、一気に俺たちを潰しにかかるつもりなのかもな」

 空恐ろしいことを言いながらも、せとみは、に、と笑った。
 戦うときの、凶悪な顔だ。

「だからこそ、襲われる前に先手を打つべきなんです。言ったように、僕らは力を分散させた。今までの時代よりも、戦いやすいはずです」

「魔も、これまでよりも強力かもしれないじゃない」

 青い顔で、はるかが言う。
 はるかとはるみは、攻撃性はさほど高くないのだ。

「その可能性もあります。でも大丈夫ですよ。はるかもはるみも、守りの力は僕らよりもある。忘れてはいけませんよ、橘家の人間なんですからね」

「そうよぅ。それに、はるかにはちゃんとしたボディーガードがいるじゃない」

 はるみが口を尖らせながら、ちょい、とはるかの横の土門を指した。

「ま、土門には守りの力もないわけですが、度胸と腕力で何とかなるんじゃないですか? 念のため、桃でも持っておけばよろしい」

 またも本気なんだか何だかわからないことを言い、せとかは再び、萌実に視線を戻した。

「で、南野さんは、昨日散策してみてどうでした?」

「ん……と、あの、上手く言えないんですけど」

 前置きしてから、萌実は山頂の、あの岩場で感じた何とも言えない感覚のことを言った。
 と言っても『何とも言えない』感覚なので、前置きの通り、全然上手く伝えられなかったのだが。

「ふ~む……」

 案の定、皆困ったように黙り込んだ。
 そもそもあの感覚が、今回のことに関係しているかどうかもわからない。

 ただ古戦場跡、というだけで、過剰に反応してしまった故なのかもしれないし、あんな断崖絶壁、何もなくても恐ろしい。
 単なる高いところに対する恐怖心だったかもしれないのだ。
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