結構な腕前で!
 一方萌実も、クローゼットを睨んでいた。
 せとかが迎えに来ると言う。
 充を出て、いつもの公園まで送って貰った後で、ほんとの別れ際にいきなり言われた。

---行くのは学校だけど、でも休日に二人で! デートじゃない?---

 例え目的地が魔の巣窟であっても、何といってもせとかがはっきり『守る』と言ってくれたのだ。
 今や魔の穴は萌実の中でお化け屋敷程度のものとなっている。

---デートだったら多少怖くたっていい! むしろ怖いほうがいい! せとか先輩が守ってくれるし、きっと密着度も期待できるはず!---

 にまにまと頬を緩め、萌実は引き出しを開けて行った。
 浮かれているが、やるべきことは忘れていない。
 結構な登山に、岩場登り。
 魔の相手も体力を使うだろう。

---スカートは駄目だよね。遊園地に行くことを考えれば、パンツだよな---

 登山と考えると、長袖長ズボン。
 でもそれだとあまりに色気がないなぁ、とクローゼットを引っ掻き回して悩む。

---そういやせとか先輩の私服って見たことないな。どんな感じなのかな。楽しみ---

 せとみは前に真行寺家に行ったときに私服は見ている。
 至って普通の格好だった。

---まぁ男の人の服装なんて、そうそうレパートリーないと思うけど---

 ただそのレパートリーが洋装か和装かのでかいカテゴリーでしか分けられないほどのものだとは思っていない。
 うきうきと、恋する乙女は明日を心待ちにするのだった。
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