結構な腕前で!
「そう……ですねぇ。というか、普通のお出かけって?」

「えーと、そっか。先輩からすると、茶会とかが普通のお出かけになるんですかね。こういうお出かけのほうが特別なのかもしれないですね」

 茶会というのが、そんな頻繁にあるものなのかはよくわからないが、茶道の家元ともなれば、そういう付き合いのほうが多そうだ。
 だからこそ、洋服である必要がないのだろう。

「……確かに今日は、特別ですね」

 ぼそ、とせとかが呟いた。

「そうですねぇ~。命に係わるというか。……て考えたら怖くなってきました」

「いえ、そうではなくて。……まぁ南野さんのことは、ちゃんと守りますから大丈夫ですよ。帰って来れないという事態にはならないです」

「やめてくださいよ」

 何気に怖いことを言うせとかを遮り、ふと萌実は話題を戻した。

「そうじゃないって? 魔の穴を閉じる以外に、何か特別なことでもあるんですか?」

 さっきせとかは、『そうでなくて』と言った。
 他に何かあったっけ、と思って聞いてみると、せとかは前を向いたまま、少し足を速めた。

「……学校絡み以外で南野さんに会っているので」

 からんころん、という下駄の音に掻き消され、聞き取りにくかったが、確かに聞こえた。
 厳密には『学校絡み以外』とも言えないが、意味するところはわかったような。

---つまりはプライベートで私に会うってのが特別ってことだよね?---

 うひょぅ! と小さく飛び上がり、萌実はせとかを追った。
 そういう意味だとはわかったが、果たしてそれは、萌実の求めるような気持ちあってのものだろうか?

「ど、どうせなら、魔絡みでもなかったら良かったんですけどね」

 思い切って突っ込んでみると、ぴた、とせとかの足が止まった。
 ゆっくりと振り返る。
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