結構な腕前で!
「そう思ってくれますか?」

 うおー! もう、どういう意味だ! はっきり言ってくれー!! と心の中で雄たけびを上げ、だが核心に迫れば迫るほど怖くなるのも乙女心だ。
 なので雄たけびは口から出ることなく、若干仰け反った萌実の握りしめた拳に現れるに留まった。

「折角の南野さん言うところの『普通のお出かけ』なのに、魔絡みとか楽しくないですしねぇ」

 萌実が横に並んだタイミングで、せとかが軽く言う。
 ん、と萌実はせとかを見上げた。
 先の言葉は、深い意味はなかったのだろうか?

---いやでも、私と会うことが特別だとは言ったよなぁ---

 わからん、と頭を悩ませているうちに、せとかは横道に逸れた。
 あれこれ考えていた萌実は、慌てて方向転換する。

「先輩、どこ行くんです? そっち学校じゃないですよ」

 毎日通っているのだから、道を間違うわけはない。
 が、せとかに限ってはあり得る、と思ってしまう。
 どんだけぼーっとしてるイメージなんだか。

「先輩、学校はこっちですよ」

 萌実が声をかけると、せとかは何故か冷めた目を向けた。

「正面から行ったって、休日は校門閉まってます」

「あ、そうか」

 せとかは細い脇道を進み、校門から離れていく。
 やがて道の舗装が途切れ、土がむき出しになった。
 徐々に緑も多くなり、坂道になる。

「裏山から入るんですか」

「どうせ目的地は山ですからね」

 しばらく行くと、小さな門があった。
 学校の裏口の門らしいが、こちらはほぼ使われていないのだろう。
 門には蔦が生い茂り、何年も開閉されていないことが窺える。

 しかも横に避ければ中に入れる。
 門の意味がない。

「ま、一応学校の管轄地ですよ、という主張ですね」

 門の横を通って中に入り、そのまま進んでいく。
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