結構な腕前で!
 いやでもせとか先輩なら。
 駄目駄目、安売りしちゃ。
 目まぐるしく心の中で二人の萌実がせめぎ合う。

「でもせとか。力放出したわりには元気ね~」

「起きてられるんだ~」

「「萌実さんのお蔭かしら~」」

 萌実がぐるぐると一人問答をしていると、はるかとはるみがにこにこと覗き込んできた。

「え? えっと。何のことですか?」

 一人問答が忙しくて、あまり聞いていなかったが、何だか知らないうちに、萌実はせとかの役に立っていたようだ。
 だがやはりさっぱりわからず、ちらりとせとかを見る。
 茶道具を元の位置に戻しているが、動作がやたらとゆっくりだ。
 ぼーっと率も、いつもより高いような。

「せとかは内在する力が強いんだ」

 先の一連の行動もあり、どきどきしつつせとかを窺っていた萌実の横に座りながら、せとみが言った。
 せとかはきっちり正座だが、せとみは着物でも胡坐だ。

「これまでの攻撃で気付かなかった? 俺は武器を直接奴らに打ち付けて戦うけど、せとかはあんまり攻撃しないだろ?」

「あ、そういえば」

 言われてみれば、せとかはほとんど攻撃しない。
 気付いた雑魚は、よく柄杓ですこんと叩いているが、攻撃らしい攻撃は、さっき菓子きりを投げつけたときぐらいか。

「だ、だけどそれは、私がいるから仕方ないのかなって」

 せとかは萌実を守ることを第一にしてくれていたのではないか?
 いつも煙の攻撃があるときは、せとかが傍にいてくれたのだ。

「ああ、まぁ。南野さんの近くにいれば、それなりに安全ですからね」

「え?」

 ゆっくりと道具を戻しているせとかは、何か今にも寝そうな雰囲気だ。
 ぼー率半端ない。
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