結構な腕前で!
「そりゃ……あんたにゃ守りの力はないだろ?」

 照れ臭そうに言う。
 守りの力がない、ということに関しては、土門も同様のはずだが。

 しかも土門は魔とのキャリアもない。
 そこを、こそっとはるみが指摘すると、せとみはぷいっと顔を背けた。

「野郎なんざどうでもいい」

「野郎っていうか、土門くんだからでしょ」

「うるせぇな。ガタイのいい野郎と真行寺を一緒にすんなよ。こいつはこれでも女なんだし」

「前半だけで止めておけば、大分印象違ったのにね」

 にやにやと言い、はるみは由梨花を見、次いで向こうに転がる土門を見た。
 畳に転がってぜぃぜぃ言っている土門と、脇息に寄りかかってはいるものの、しゃきんとしている由梨花とでは、『男だから』『女だから』という物差しでは測れないようにも思うが。

 そもそも戦い方が違うのだ。
 土門は柔術なので、掴んでは投げ、の繰り返し。
 自然大きな魔を相手にすることになる。
 いくらせとみが掴めるようにある程度固形にした後の魔であっても、でかいものを投げ飛ばし続ければ体力も使う。

 対して由梨花は鋏を操って仕留めていく。
 その姿はまるで舞いを舞うようで、無駄な動きが一切ない。
 慣れもあろうが、最小限の動きで魔を仕留めていくので、疲労も最低限で済むわけだ。

「それでも気にかけて頂けるのは嬉しいですわ」

「そうね。大分せとみの心を掴んだ感じね」

 由梨花とはるみに見られ、せとみは意味なく舌打ちすると、またぷいっとそっぽを向いた。
 たまたま窓のほうに顔が向いたせとみの目に、すっかり晴れた空が映る。

「そういや、魔の封じが成功したんなら、そろそろあいつら帰ってくるよな」

「ああ、そうね。こっちの魔も出なくなったし、成功したのよね?」

 すっかり話が逸れていたが、メインの二人は無事なのか?

「でかい力を感じたって言ったな。まぁ力の放出は避けられないだろうけど、せとかの奴、大丈夫かね」

「力の放出っても、萌実さんがいるんだし。せとかの意識がなくなるってことはないんじゃない?」
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