結構な腕前で!
 ばばばばば、と辺りの風を巻き上げて、ヘリが降りてくる。

「……まじかよ」

 足を踏ん張りながら、せとみは呆気に取られて着陸するヘリを眺めた。
 小さなものだが、、れっきとしたヘリコプターだ。

「店員は四人なので、わたくしとせとみ様で参りましょう」

「え、いいな~、せとみ」

 はるみが羨ましそうに言う。
 そして、ふと首を傾げた。

「あら、でも四人だったら、土門くんを見つけても回収できないじゃない?」

「そもそもあんなデカブツ、一人で二人分の重量でしょうしね。吊り下げて回収しましょうか」

「それはあんまりじゃない?」

「そうかしら。だったら仕方ないから、但馬に頼みましょう」

 まだ穴がどうなったか確認していないので、もう魔が出ないとも限らない。
 部室に魔に対応できる者が誰もいなくなるのは避けたほうがいい。
 但馬は凡人(多分)なので、その点は問題ないわけだ。

「但馬。土門なるデカブツを回収してらっしゃい」

 ヘリのドアを開けた但馬に命じると、但馬は、さっと頭を下げて山に入っていく。

「あいつ、迷いもなく山に入っていったけど、大丈夫なのかよ」

 ヘリに乗り込みながら、せとみが呆れたように言うが、由梨花は何ら気にしていないように、ヘッドホンをつける。

「お気になさらず。わたくしの命令は絶対ですから」

 それが怖い、と思うのだが、そこを突っ込んだところで、これが当たり前の人間には理解できないだろう。
 せとみがドアを閉めると同時に、ヘリは再び宙に浮いた。

「おおっ。すっげー」

 窓にへばりついて、せとみが歓声を上げる。
 庶民はヘリに乗ることなど、まずない。
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