結構な腕前で!
「さすが真行寺さん……。でもこれで安心です」

 するりと手の内からこぼれそうになったせとかの手を、萌実は再び、ぎゅっと握る。
 そして、力任せに引き寄せた。

「安心するのは早いです。先輩、自力で上がらないと駄目なんですからね!」

「いいですよ。南野さんさえ無事であれば」

 辛そうなのに、無理ににこりと笑みを向ける。
 それだけで、萌実はプロテインを飲んだかのように筋肉が盛り上がる。
 ぬおおおお、と渾身の力を込めてせとかを引っ張り上げ、梯子にせとかの手を添えた。

「さぁっ! 先輩、握ってください!!」

「……あ、はい……」

 いきなりな萌実の馬鹿力に驚いた顔で、せとかは梯子を握りしめた。

「ちゃんと持ちました? 上がりますよっ」

 言うなり萌実は、せとかの襟首を掴んだ。
 そのまま縄梯子を上がりだす。

「うげっ。ちょ、ちょっと南野さん……」

「一人じゃ上がれないかもしれないじゃないですか! ここで先輩が死んじゃったら、私は何のために茶道部に入ったんだかっ」

 せとかの襟首を掴んだまま、萌実は必死で梯子を上がった。
 大の男を引きずって、安定しない縄梯子を片手で上がるなど、普通はできない。

 だが今の萌実はラブプロテインのお陰で超人並みの力を発揮している。
 片手にせとかをぶら下げたまま、萌実は、ばん! とヘリの縁に手をついた。

「よい……しょっと」

 自分の身体を持ち上げてヘリに腰掛け、最後にせとかを引っ張り上げる。

「は~、助かった」

 せとかと共にヘリの床に倒れ込み、萌実は安堵のため息をついた。
 呆気に取られていたせとみが、すぐ横に屈み込む。

「いや、萌実ちゃん凄かったけども。せとか、生きてる?」

 せとみに言われ、ん、と萌実は己の上に倒れたままのせとかに目を落とした。
 上体を起こして見てみれば、せとかの首が真っ赤になっている。

 襟首を掴んでいたので、首が絞まっていたらしい。
 そういえば、初めに『うげっ』とか聞こえたような。
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