結構な腕前で!
「わーーっ! 先輩、死なないでーーっ!!」

 萌実が焦って、せとかの頬を叩く。

「う、だ、大丈夫です……。ただちょっと……手を……」

「手?」

 わけもわからず差し出した萌実の手を、せとかがぎゅっと握った。
 うわぉ、と萌実の血圧がまた上がる。

「しっかし萌実ちゃんがいたのに、えらい重症じゃねーか」

 ヘリの床に寝転がったままのせとかを見下ろし、せとみが言う。
 眠ってしまってはいないが、その分しんどそうだ。

「今日は一発じゃなかったので……。最終結界も張りましたし……、なるほど、これを一人でやろうとすれば……死ぬかもしれません」

「ぎゃー、いやーっ! 先輩、死なないでーーっ!」

 萌実の右手を握っているせとかの手を、さらに左手で包んで萌実は絶叫した。
 せとかが驚いた顔になり、せとみが耳を押さえる。
 ヘリの中だというのに、ヘリの音より萌実の声のほうがでかい。

 とりあえずヘリであれば、元の広場まではひとっ飛びだ。
 あっという間に四人は部室の近くの広場に降り立った。

「あー……。あいつ、帰ってねぇかなぁ」

 ヘリのドアを開けながら、せとみが辺りを見回した。

「せとかを部室に運ばないと駄目だし。こういうときに限っていねぇって、どんだけ役立たずなんだか」

 土門のことを言っているのだろう。
 確かに彼ならせとかの一人や二人、軽々運べる。
 が、生憎まだ連れ戻されていないようだ。

「わたくしが戻るまでに連れ戻していないなんて、但馬、怠慢ですわね」

 かつ、と地に足をつけるなり、ふんぞり返って山を振り仰いだ由梨花が言った。
 その瞬間。
 どだだだだ、と凄い砂埃が山のほうに舞い上がった。
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