結構な腕前で!
「桃は最強の魔除けだと言ったでしょう。南野さんは、名で常に守られてるんです」

 せとかがダルそうに前髪を掻き上げる。
 ああっこの気だるい感じが色っぽい! とせとかに見惚れていた萌実だが、ん? と首を傾げる。

「あのぉ。私の傍にいれば安全って……?」

「だから。南野さんは守りの力が強いんです。その人の傍にいれば安全でしょう? 避雷針みたいなもんですよ」

 さらっと言われたことに、萌実は、がぁんとショックを受けた。
 常に傍にいてくれたのは、萌実を守るためではなく、己の保身のためか。

「まぁまぁ。せとかは例えが下手くそだからなぁ。でもほら、結果ちゃんと守ってくれてたろ?」

 萌実のショックに気付いたのか、せとみがフォローに入る。
 もしかして自分の好きだった先輩は、せとみのほうなのだろうか、と萌実の気持ちがぐらぐら揺れる。

「ていうかさ、やっぱり萌実ちゃんの能力は凄いな。せとかが力を使っても耐えられるなんて」

「そうですね。南野さんは何ともないですか?」

 せとかが眠そうな目を向ける。

「何の説明もなく、いきなり協力して貰って悪かったですね」

「あ、いえ」

 せとかに気遣われてる、と思うと、やはり内心テンションが上がる。
 何で同じ顔なのに、せとかにしかときめかないんだろう。

 せとみのほうがフレンドリーだし、しゃきっとしている。
 魔物を狩るときは豹変するが、でもそれはせとかも同じだ。

 またもぐるぐる考えつつ、萌実はせとかをちらちら見た。
 と、いきなりせとかが萌実の手を取った。

「……っ!」

 いきなりなことに驚いている萌実の手を、せとかはまじまじと見る。
 そして、さらりと手の平を撫でた。
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