結構な腕前で!
「つか、あいつ凄ぇなぁ。どんだけ力があるんだ。ロボットか?」

「まさか。ちゃんと人間ですわよ」

 せとかをお姫様抱っこすることはともかく、土門を担いで山道を疾走してきた辺り、『ちゃんとした』人間とも言い難い。
 それに、由梨花が自分より先に但馬が帰ってきていないことに不満を漏らした途端、足音がしたのだ。
 由梨花の言葉に反応したとしか思えない。
 それこそ人間業ではない。

 とりあえず、せとかははるみが用意した結界部屋に寝かされた。
 何故かずっとせとかが手を握っているので、萌実もそのままついていく羽目になったのだが。

「萌実さんが、せとかのこと好いてて良かったわぁ」

 せとかを布団に転がしてから、はるみがしみじみと言った。

「力の補給をしてるんだろうから、しょうがないっちゃしょうがないけど。でも嫌いな人に、ずっと手を握られるのは堪ったもんじゃないでしょ?」

 あ、力の補給だったんだ、と山の天辺から浮かれっぱなしの萌実は、ようやく冷静になった。
 考えてみれば全ての行動は決して甘やかなものではなく、単に魔に対応するための行動だ。

---まぁそうだよね~。私はカンフルなんだし---

 わかっていたことだが、ちぇっ、と萌実は繋がれた手に視線を落とした。

「でも私がせとかだったら、力が必要でも嫌いな人から貰うのは嫌だけど」

 不意に聞こえた声に顔を上げると、はるみが意味ありげに笑っている。

「それは、喜んでいいんですかね?」

「普通はね。でも残念ながら、相手はせとかだし。せとかに関してはわかんないわ。この人、相当変わってるし」

 ちなみに今そのせとかは寝入ってしまって、枕元の二人の会話は聞いていないはずだ。
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