結構な腕前で!
「じゃ、後はしばらく様子見だな。せとかの意識も戻ったし、今日は解散すっか」

 ぱん、と膝を叩いて、せとみが立ち上がる。

「あ、由梨花。ヘリまだあるなら、私乗ってみたい」

 はるみが、しゅたっと手を挙げて言うと、由梨花は不思議な顔をした。

「そんな珍しいこと?」

「庶民はヘリなんか乗れないわよ。ねぇせとみ。せとみももっと乗りたいわよね?」

 すかさずはるみは、せとみを巻き込む。

「せとみ様がそう仰るなら、ヘリでお送りしますわ」

 せとみはまだ何も言っていないが。
 が、はるみは、やった、と万歳し、せとみを連れていそいそと出て行った。

「じゃあ私たちも帰ろうか。土門くん、大丈夫?」

「うむ。わしは柔道部に寄ってひと稽古して参る。はるか殿も、よろしければ寄っていかれぬか?」

 言葉を交わしながら、はるかも土門と共に出て行く。
 部室の中には萌実とせとかだけになった。

「では僕たちも帰りましょうか」

 せとかがその辺りを片付け、鍵を持って立ち上がる。

「折角ですから、どこか寄りましょう」

「えっ」

「お腹空きません?」

 あ、何だ、いつもの腹ごしらえか、と肩を落とした萌実に、せとかは少し照れ臭そうな顔を向けた。

「この格好の僕と町を歩くのは、恥ずかしいかもしれませんが」

「い、いえっ! とんでもない!!」

「じゃあ良かった。行ってみたかった店があるんです」

 ほっとした拍子に表情が緩む。
 こんなかわいい顔もするんだ~、と密かに惚れ直しつつ、萌実はせとかの後に続いた。
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