結構な腕前で!
 とはいえ、やはり街中で着物姿の男子と普通の格好の女子では目立つ。
 これが反対ならまだマシなのだろうが。
 しかも何気に二人とも傷だらけと来た日にゃあ、周りの目が気になってしょうがない。

「日本人は本来和服であるべきなのに、何故和服の僕が浮くのか、昨今の衣類事情はわけがわかりませんね」

 いつの時代の考えなんだか。
 でも一応この格好は普通浮く、ということは理解しているようだ。
 着物が普段着なのであれば、どんなところでも平気なのかと思っていたが、そうでもないらしい。

「じゃあ今向かってるお店も、着物だから行けなかったんですか?」

「いや……。ちょっと男一人で行くのは恥ずかしいというか」

 そんなお洒落なところに連れて行ってくれるのか! と、せとかの格好を加味せず浮かれた萌実だったが、せとかが足を止めたのは、小さな喫茶店だった。
 和モダンといった感じの店内は、そこそこお洒落ではあるが、いかにも女子が集まりそうな雰囲気でもない。

「街中なのに大通りからは外れてて穴場ですし、全然一人でも来れそうですけど」

「そうですか? う~ん、でも僕、これが食べたいんですよ」

 メニューの一番初めを開き、ずい、と萌実の前に差し出す。
 メガ盛り和風パフェ。

「……えーと、これってどの程度の大きさなんですかね」

 メニューの写真では普通に見える。
 ただパフェというわりには器がかき氷の器のような平べったさだが。

「まぁ普通のサラダボウルぐらいですよ。ショーウィンドウ見ましたけど」

 言いつつ手で丸を作る。
 が、それはどう見ても一人用サラダボウルの大きさではない。
 せとかの言うサラダボウルは、取り分け用のでかいほうだ。

「凄いんですよ。下にホットケーキが敷かれて、あとは抹茶パフェの定番なんですけど、白玉団子とあんこがたっぷりなんです。クリームと抹茶アイスの上にはケーキが三つも乗ってるんですよ。このパフェのいいところは、あんこがたっぷりなところなんですよね。僕、抹茶はあんこがあって何ぼだと思うので」

 熱くパフェを語る。
 普通に考えれば、とても完食できる量ではないのだが、せとかに限ってはそうではない。
 むしろこれが適量かもしれないのだ。
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