結構な腕前で!
「そうですね。まぁあのときは力を出し尽くした後なので、僕の身体の中は空っぽでしたから軽かったかもしれません」

「そんなに変わるもんですかね」

「どうでしょう」

 笑いながら、せとかはクリームとあんこと抹茶アイスの層に突入する。

「脂肪にはならないんですかね。びーちゃんでも支えられたわけですし」

「脂肪になったら恐ろしいですよ。僕は今頃百貫デブです」

「そうとも限らないですよ? 大食いの人って結構痩せてますし」

「あれは不思議ですよねぇ」

 あっという間にあり得ない量のパフェを平らげ、せとかがスプーンを置いた。

「うん、美味しかった。やっぱりパフェはここが一番ですね」

 あの量を平らげたとは思えないほどの涼しい顔で、せとかは両手を合わせる。
 量は人間離れしているが、食べ方は綺麗だ。
 がっついている風でもないのに、何故普通サイズのパフェを食べている萌実よりも早く食べ終われるのだろう。

「せとか先輩のお気に入りの店なんですか」

 聞いてみると、せとかはちょっと照れたような顔をした。

「そうですねぇ。でも中で食べたのは初めてです。お持ち帰りしかないんですよ。魅力的なものが多いんですけど、男一人で食べるのはちょっと……」

 そういうものか。

「ここはあんこが美味しいんですよ。元々和菓子屋だったようでね。ほら、抹茶パフェだって、普通よりもあんこの量が多いと思いません? さっきも言いましたけど、僕は常々、抹茶は単体よりもあんこがあって何ぼだと思うんです」

「茶道の家元が、そんなこと言っていいんですかね」

「ちゃんと点てる抹茶はいいんです。こういう加工物ですよ。飲む抹茶でない抹茶は、あんこがあってこそ引き立つものじゃないですか?」
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