結構な腕前で!
---ひーーーっ! 何なの、先輩! いきなり大胆すぎ!---

 全くせとかは行動が読めない。
 ぼーっとしているかと思えば油断しているところに、いきなりこんな行動を起こしてみたり。

「特に火傷もしてないですね」

 目の前でかちんと固まっている萌実に気付く風もなく、せとかはそう言うと、ぱ、と手を離した。

「何々? せとか、火傷するほどの術だったの?」

「女の子使って、それはないわよ~」

「「怪我しちゃったら責任取れるの~?」」

 同じ顔の女二人に迫られても、せとかは相変わらず眠そうな顔で、ひら、と手を振った。

「大丈夫です。実際に火を噴いたわけではないので」

 何てことのないように言い、せとかは小さく欠伸をした。
 やはり眠いようだ。

「せとか、ちょっと休んだほうがいいんじゃない」

「結界の間、まだ大丈夫かな」

「「張り直すから、休みなさ~い」」

 はるかとはるみに急かされ、せとかはダルそうに立ち上がる。
 そして茶室を出しな、萌実を振り返った。

「もうちょっと慣れれば、多分何ともなくなりますよ」

 そう言って廊下を歩いて行く。
 萌実は何のことだかわからず、ただぼんやりと開いた障子を眺めた。

「凄いな。萌実ちゃん、せとかのカンフルだよ」

 はた、と我に返れば、一人部屋に残っていたせとみが興味深そうに萌実を見ていた。

「え、あの。何のことですか?」

 どうせちゃんと聞くなら、外野のいない一対一のほうがいい。
 萌実はせとみに身体を向けた。

「えっとね。俺たちの役割はわかったよね? 基本的に攻撃するのが俺とせとか。はるかとはるみは封じというか。で、その中でも率先して戦ってるのが俺だ」

 何故か若干胸を張る。

「それは、せとみ先輩が裏部長だから?」

「う~ん、まぁそれもあるね。つか、逆だ。俺が実際に動くから、裏部長なの」

「裏部長の地位は、後付けってこと?」

 萌実が聞くと、せとみはこくりと頷く。
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