結構な腕前で!
「うーん……。あんまり気にしたことなかったですけど、確かにあんこがあったほうが美味しいかな?」

 パフェを口に運びながら萌実が言うと、せとかは大きく頷いた。

「そうでしょう。なのに世間の抹茶何とかは、大抵あんこが少ない。抹茶メインだから仕方ないのかもしれませんけど、あんこはそれを引き立てるってわからないんですかね」

 何だろう、このあんこ愛は。

「あんこって素晴らしいんですよ。手軽なエネルギー補給になりますし、結構何にでも合う。知ってます? ヨーグルトにあんこを入れると、かなり美味しいんですよ」

「ええっ! 本当ですかぁ?」

「騙されたと思って、やってみてください」

「ほんとに騙されそう……」

「おや、信用ないですねぇ。何なら今から家来ますか? ご馳走しますよ」

「え、いいんですか?」

 目的はどうであれ、お家へのお誘いだ。
 萌実はがっつり食い付いた。

「南野さんは面白いですねぇ」

 あははは、とせとかが笑う。

「僕の行動にいちいち引かないし、嬉しいです」

「え、引くようなこと……」

 あったっけ、と言いそうになり、萌実は言葉を呑み込んだ。
 考えてみれば引くようなことばかりではないか。
 格好といい食べる量といい。
 それを普通として違和感なく受け入れている自分が、少し恐ろしくなる。

「大体、この格好の僕と普通に歩いてくれる人なんて、そういませんよ」

「うーん、でも先輩にとってはそれが普通の格好なんでしょう? 遊びに行くときも、その格好なんですか?」

「遊びに行く、ということが、あまりないですが」

 じ、と萌実が見ていると、せとかはちょっと気まずそうに視線を逸らせた。

「すみません、嘘つきました。遊びに行くことはないです」
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