結構な腕前で!
「学校の裏山は、順調にびーちゃんが蔓延ってるから大丈夫だろ。道場も、必要なくなるだろうな」

 ヘリで帰ってくる道中、いろいろ確認してきたのだろう。
 抹茶ブッセを頬張りながら、せとみが言った。

 その途端、せとかが、がばっと立ち上がった。
 そして、だだだっと廊下を走っていく。
 程なくして戻ってきたせとかの手には、小さな壺に活けられた、一株のびーちゃん。

「良かった、無事でした。魔がいなくなったから、この子も枯れてしまったかと思いましたよ」

 皆の冷めた視線にも気付かず、せとかは机の上にびーちゃんを置いた。

「そういえば、この子の餌は今後どうなるんですか?」

「つってもせとか。別に餌なんざやってねぇだろ」

「そうですけど、何となくその辺に漂う魔を食らってるのだと思ってたんですよ。でも今後、魔はそうそう現れません。何も食べなくても大丈夫なんですか?」

「あのな。そいつ、植物だってわかってるか?」

「植物だって餌は必要ですよ。土に生えてるならバクテリアとか吸収できるでしょうけど、壺に活けられている状態では、それもままなりません。水……とか?」

 やたらとびーちゃんを気にするせとかに、せとみが呆れた顔で肩を竦めた。
 そして、由梨花に丸投げする。

「そいつのエキスパートは真行寺だろ」

 せとみに振られ、由梨花が優雅にお茶を飲んだ後で、ばさ、と髪を掻き上げる。

「びーちゃんにお水は必要ありませんわ。そもそも活けた壺は亜空間になりますのに、どうやって水を入れるというのです? 餌という餌も必要ありませんわ」

「そうなんですか。つくづく不思議な植物ですねぇ」

 少し安心したように言い、せとかはびーちゃんをしげしげと眺める。
 よほど気に入っているらしい。

「でも、魔がいなくなれば亜空間を開ける必要もないわけですし、裏山の穴は、びーちゃんが覆っているのでしょう? だとすると、びーちゃんは亜空間を開けるだけでなく、向こうの世界との門番的なものなのかもしれませんわね」

「そうか。土から生えてる分には、空間は開かないのかも」

 ぽん、とせとみが膝を打つ。
 びーちゃんの下に必ず亜空間があるなら、由梨花の家の庭など亜空間だらけだ。
 恐ろしくて近付けない。
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