結構な腕前で!
 これを機に、はるみが華道部へと移ってしまった。
 元々由梨花と仲が良かったこともあり、華道部存続のためにも人数を増やす必要がある。
 もっとも魔がほぼ消えたことは、元々魔に関わっていた者しか知らないので、学校側の防衛である華道部が廃部になることはないだろうが。

 土門も兼部をやめ、柔道部に帰った。
 魔からはるかを守る必要もなくなったし、めでたく二人は付き合うことになったので、わざわざ茶道部に来なくても、いつでも会えるわけだ。

「それにしても、静かになったわねぇ」

 切り分けた羊羹を頂きながら、はるかがしみじみ言う。
 魔も出ない四人だけの部活は静かなものだ。

「良いことですね。本来茶道は、こうあるべきです」

 皆と同様、切り分けた羊羹を食べながら、せとかも頷いた。
 いくら何でも、さすがに一本食いはしないのか、と思っていると、二切れ食べて、せとかは菓子きりを置いた。

「どうしたの、せとか。具合でも悪いの?」

 羊羹二切れなど、普通の量だ。
 はるかが驚いてせとかを覗き込む。
 普通の量を食べているのに心配される辺りがおかしなところだが。

「いえ……。何か普通にお腹が大きくなって」

 せとか本人も不思議そうに、己の腹を見る。

「風邪でも引いたんでしょうか」

 自分でも納得いかないというように、せとかは自分の身体を両手でぽんぽんと叩いた。
 皆不思議そうにしているが、萌実は、いやいや、と膝を進めた。

「ていうか、あの穴塞いだ後、先輩自分で力がなくなったって言ってたじゃないですか。そのせいですよ、きっと」

 皆が、きょとんと萌実を見る。
 長年大食らいのせとかを見てきたせいか、それが普通になっているせとみとはるかは、せとかも普通の人間だ、ということ自体を忘れているのではないか。
 食欲と力の有無を結び付けることはないらしい。
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