結構な腕前で!
「ええ。大元を絶ちましたしね。でも量が大幅に減っただけで、全くいなくなることはないんですよ。初めに言ったでしょう、魔は人が作り出すもの。人がいる限り、魔が滅びることはありません。徐々に多くなり、人が対応できる限界まで増えると、そのときの神の子が一掃する。それを繰り返してきたんです。真行寺家が常に魔の量を把握してきたんでしょうね。うちはたまたま創始者が魔退治を茶道に活かしたことで、独自の極意を作り上げた」

 どんな創始者だ。
 三代か四代ぐらい前とか言っていたから、せとかのひいじいさんか、その前ぐらいか。
 そう考えて、何となく納得する。

 きっと創始者とせとかは似ているのだ。
 ちょっと変な人だったに違いない。

 大体正式名称が『茶道道場』て。
 『道場』て何。

「てことは、ここに道場があったのも、魔練流ではそれが正式だからですか」

「そうですね。正式というのであれば、本当は道場こそが茶室なんですが」

 でもそうすると、弟子がつかない。
 なので本来のほうを『裏流派』としているということだ。

「いやぁ、南野さんの順応力には感心します。茶道の腕も、この調子だと申し分ないですし。力も最強です」

「で、でもせとか先輩、力なくなったんなら、カンフルは必要ないんじゃ……」

 萌実が言うと、せとかはちょっと真面目な顔になった。

「南野さん」

「はいっ」

 居住まいを正して言われ、萌実もびしっと背筋を伸ばした。

「力がなくなったので、僕にカンフルは必要なくなりました。だけど、南野さんまで必要なくなったわけではないんですよ」

「……えっ」

「当たり前じゃないですか。片手で僕を食虫植物の海から救い出してくれる人など、そういません」

 それはそうだろう。
 そもそも食虫植物の海に溺れること自体が、普通ではあり得ない。

「それ以前に、南野さんは元々僕のことをしっかり認識してくれていた。クラスメイトにすら覚えられていない僕を中学時代から認識しつつ、一年のブランクにも忘れることなく追いかけてきてくれるなど、犬でもありませんよ」

「いやあの。犬だったら覚えてくれてるんじゃないかな……」

 萌実の突っ込みをスルーし、せとかは少し膝を進めると、がしっと萌実の両手を取った。
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