結構な腕前で!
 裏山の中腹には、小さな茶室が建っている。
 小さい、といってもちゃんと日本庭園もあり、敷地は広い。
 そこに建つ立派な茶室に、しゅんしゅんとお湯の沸く音が響いていた。

「今年は新入生、入るかしらねぇ」

「いい加減人手不足よねぇ」

 ずず、とお茶椀を傾け、橘(たちばな) はるみが言えば、その横で橘 はるかがお菓子を頬張りながら頷く。

「「部長。今年こそ、新人を入れてくださいね」」

 最後は綺麗にハモりながら、二人ともそれぞれ茶碗と楊枝を畳に置いた。
 その視線の先では、着物姿の青年が炉の前に座っている。
 手に持った柄杓をくるりと返し、釜に伏せる。

「さて、見学会も閑古鳥でしたし……」

 袱紗を弄びながら言うのは、北条(ほうじょう) せとか。
 茶道部の部長である。

「裏部長のせとみは、今日もいないし~」

「今日のお菓子が鮎(駄菓子)だって知った途端に出ていっちゃった~」

「「美味しいのにね~~」」

 最後にハモるのは癖なのか。
 ちなみにこの二人は外見もそっくりである。
 名前からわかるように、双子なのだ。

「今年は見学会にもちゃんと参加したっていうのにね~」

「きっと部長のせいよ~」

「「部長、びっくりするほど存在感ないもの~~」」

 同じ顔が訴える。
 はるかとはるみに言いたいことを言われ、せとかは僅かに眉間に皺を寄せた。
 そして、丸い障子窓に目をやった。

「今年は良い子が入ってくれるかもなんですけどねぇ」
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