結構な腕前で!
第四章
「萌実っ。その後どう?」

 ある日のお弁当タイム。
 中学のときからの友達、杏子がサンドイッチを片手に身を乗り出した。

「憧れの北条先輩と、がっつりお近づきになれたわけでしょ?」

「ああ、うん、まぁ」

 萌実は卵焼きを口に運びながら、煮え切らない答えを返した。
 お近づきになれたといえば、この上なくがっつりお近づきになれた。
 二人の力のことも知ったし、鯛焼きを頭から齧る人だということもわかった。

 別に鯛焼きの食べ方による性格判断をそこまで信じているわけではないが、やはり微妙に性格が出る。
 せとみは、ああ見えて結構好きなものを大事にするというか。
 わざわざ切り離して保管してたわけだし。

 傷付かないように最後まで守るというのだろうか。
 優しいかも。

 そう考えると、せとかは合理主義っぽい。
 好きなものを最後に回すのは一緒かもだが、頭から食べれば結果は一緒、という感じ。
 その他も、何かちょっとせとかは掴み処がない。

「どうしたの。茶道部、つまんない?」

 いろいろ考えていた萌実は、杏子の言葉に引き戻された。

「あ、いや、そういうわけじゃ。ただ私は、お茶と共にまったり先輩を堪能できると思ってたのに」

「あ~そうね。よく知らないけど、ちょっと特殊みたいね? 部室もやたらと遠いしさ」

「大体、魔と戦う茶道部って何なの」

「そのために茶道部ができたって話よ」

「そうなの? ていうか、何で茶道部なの。思いっきり文化部なのに」

 杏子は高等部に姉がいるため、高等部のことは萌実よりも詳しい。
 パックジュースを啜り、杏子はちょい、と窓の外を指差した。
 その先には、茶道部のある裏山。

「元々この辺り、古戦場だったのよ。で、最も激しい戦いの跡が、あの山。そのお蔭かこの学校、妙な噂は絶えないでしょ? 磁場もおかしいみたいで、電子機器はよく誤作動するしさ」

 そういえば、携帯をいじっている生徒はほぼ見ない。
 おそらく壊れるから皆自主的に学校では使わないのだろう。
 何とも健全である。

 おまけに部活動がやたらと盛んで活気に溢れている。
 古戦場跡で魔の跋扈する学校であっても、評判はすこぶるいいのだ。
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