結構な腕前で!
「随分暑くなってきましたねぇ」

 茶釜から湯を掬いながら、せとかが言う。
 とはいえ、ここは下界と違って結構涼しい。

 部室まで登ってくるのは地獄だが、それでも上に行けば行くほど涼しくなる。
 この部屋には冷房もないが、終始涼しい風が吹き抜けているのだ。

「せとか、お湯はあんまり熱々にしないでよ」

「萌実さんは、あんこたっぷり派?」

「「さ~、召し上がれ~」」

 せとかが点てた濃茶を削った氷にかけ、はるかとはるみが萌実に差し出す。
 今日のお茶菓子はかき氷のようだ。
 はたしてこれを茶菓子として扱っていいのかは疑問だが。

「いや~、暑いときは、やっぱこれだな~」

 横でせとみが、しゃくしゃくとかき氷を頬張っている。
 ちなみにかき氷には、白玉団子とあんこもトッピングされている。

「萌実ちゃん。甘くないから、あんこたっぷりかけたほうがいいよ」

 緑色の抹茶かき氷にスプーンを刺した萌実に、せとみがあんこの詰まった器を指す。
 部室の冷蔵庫には、ちゃんとした和菓子の他に、こういったものも常備されているようだ。

「本格的な濃茶だから、苦いんだよね」

「ここは茶道部ですから」

 氷にかけることを怒るでもなく、濃茶を点てながらせとかが言う。

「でもみぞれのシロップぐらい、あってもいいかもしれませんね」

 折角点てたお茶を、はるかが差し出したかき氷にざばーっとかける。
 茶道の家元としてどうなのだろう。
 それにしても、ここに集う部員は軒並み甘党のようだ。

---まぁ甘いモノが苦手だったら、やってられないだろうけど---

 お茶菓子というのは相当甘い。
 練り切りなど、あんこの塊だ。
 渋いお茶を頂くのだから、それで丁度良くなっているのだろうが。
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