結構な腕前で!
「そんな心配は無用です」

 どん、と背中が何かに当たると共に、背後にいたせとかの声がした。

「湧き出るものは全て、この世にあらざるものです。良いか悪いかとは無関係。ここにあるべきでないのですから、とっとと元に戻すことが大事でしょう」

 萌実を軽く支えながら、せとかが言う。
 う~ん、と萌実は顔をしかめた。

 せとかの言うことは正しいのだろう。
 ここにあるべきでないものなら、それが何であれ滅するべし。
 いちいち何かを見極めることなく、実に合理的だ。

「南野さんの、その感情は、不要のものですよ」

 静かに言って、すとんと元の場所に座る。
 何となく居心地の悪さを感じ、萌実は俯いた。

「せとかはなぁ、言い方ってものを、ちょっとは考えろよ。そんなんだから、モテないんだぜ」

「モテようなどと思いませんね」

 せとみの苦言も、せとかはさらりと流す。
 やれやれ、と軽く肩を竦め、せとみは、ぽん、と萌実の肩を叩いた。

「ま、気にしないで。優しいのはいいことだけど、うん、魔に対してはいらないよ」

 萌実もせとかの言うことが正しいのだとわかっている。
 だがどうしても、冷たい、と感じてしまうのだ。

---せとか先輩は、あんまり表情が豊かじゃないから、余計そう思うんだろうけど---

 同じことでも、せとみが言うと、もうちょっと受け取り方も違うのではないか。
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