結構な腕前で!
---あ、でも私がせとか先輩を好きだから、ちょっとしたことで傷付くってのも、あるかも---

 好きな人に関しては、過敏になりがちだ。
 せとみだとそんな風に思わないというのは、単に萌実の気持ちの違いかもしれない。
 そうだとすると、せとかには迷惑な話だ。

 何となく暗くなっていると、場の空気を読んだせとみが、ぱし、と扇を手の平に打ち付けた。

「すまんね、萌実ちゃん。せとかは俺と双子のわりには人付き合いが苦手でね。人の気持ちを考えずに言葉を口に出すところがある。でも悪気があるわけじゃないんだ」

 明るく言って、ぽんぽんと萌実の肩を叩く。
 それに、せとかは少し怪訝な顔をした。

「苦手というわけではないですが。好んで人に馴染もうと思わないだけです」

「そういうところが駄目なのよ~」

「せとみがぜ~んぶ、軽いところを取っちゃたのね」

「「雰囲気が暗いのよ~。髪切ったらちょっと違うんじゃな~い~?」」

 女子二人は容赦ない。
 きゃんきゃんと文句を言うが、それにもせとかは怒るでもない。

「あまり短くしたら、跳ねるんです」

 合理主義者らしい答えだ。
 長ければ、括ってしまえば多少跳ねても気にならない。

「全く、もうちょっと若者らしく、おしゃれでもして高校ライフを満喫しろよな」

 呆れたように言い、せとみが立ち上がる。
 それと共に、はるかとはるみも立ち上がった。

「じゃ、萌実さんも上がりましょう~」

「後片付けしちゃいましょう~」

「「お皿持ってきてくれる?」」

「あ、はい。ていうか、やっておきますよ」

 後片付けは一年坊主の仕事だろう。
 萌実が言うと、その辺のお皿や茶碗をまとめていたはるかとはるみが、見事に同じ角度に首を傾げた。

「そう?」

「でも今日はかき氷だったから、ちょっと片付けるもの多いし」

「「じゃ、この辺の道具は片付けちゃうから、器洗ってくれる?」」

 何で打ち合わせもなしに、ここまで見事にハモれるのだろう、と毎回不思議に思いながらも、萌実は頷いて、廊下の先にある台所に向かった。
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