結構な腕前で!
「とりあえず、今この手から何か感じますか?」

 せとかが繋いだ手を少し持ち上げて、萌実を見た。
 えーと、そりゃ全神経を集中してせとか先輩の感触を確かめているので、手の平だというのに脈拍を感じられるほどですが、はたしてそれが、せとか先輩の脈拍なのか、浮かれている自分の脈拍なのか、よくわかりませーん、と答えたいところを、ぐっと堪える。

「えーと、特に……」

 邪な考えでなく純粋な感想を述べると、何とも味気ない答えだなぁ、と思いつつ答えると、せとかは、ちょっと意外な顔をした。

「そうなんですか。人の気を読むことはないのかな」

 言いつつせとかは、握った手に、きゅ、と力を入れる。
 おおぅ! 先輩が私の手を握りしめてるー! その骨張った大きな手の感触が堪りませーん!! と興奮する萌実に目を向けるでもなく、せとかはまじまじと繋いだ手を見た。

「ちょっとせとかぁ。いやらしい~」

「何手をぎゅーっと握って眺めてんのよ~」

「「せくはら~」」

 たまにこちらに漂ってくる魔をすぱこんと叩き落としながら、はるかとはるみが訴える。

「人聞きの悪い。力があってもそれを良く知らないままだと、南野さんのためにもならないからです」

 双子のヤジにも涼しい顔で、せとかはようやく萌実を見た。

「う~ん……。実際に使ってみないと、本人にもわからないか。じゃ、とりあえず手に神経を集中してみてくださいね」

 言うなりせとかは、萌実の後ろに回ると、背後から萌実の両手を包み込むように取った。

「しええぇぇぇっ!!」

 いきなりなことに、萌実は心の中でなく実際に声に出して叫んでしまった。
 せとかに、背後から抱かれている状態だ。
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