結構な腕前で!
「さっき、手の平が熱くなったと言いましたね。力が入って来たのに気付いたっていうことです。その感覚をもうちょっと鍛えれば、入ってくる力を加減できると思うんです」

「な、なるほど」

 つか先輩の力が入ってくるって!
 何て淫靡な!!
 いつの間にやら萌実の脳みそは、すっかり肉食系になっている。

「それで、まぁこれからは、実際に力をどう使うかを考えていこうと思いまして」

 一人赤くなっている萌実に気付くこともなく、せとかはまた、ぱ、と萌実の顔の前に手を広げた。

「南野さんも、手を僕の手に合わせてみてください」

「い、いいんですかぁ?」

 今まで散々手を握られてきたが、全てせとかからだ。
 先輩のほうから誘ってくれるなんて~、と若干おかしくなったテンションで聞くと、せとかは妙な顔をした。

「じゃ、失礼しま~す」

 うきうきと萌実が手をせとかの手に合わそうとすると、せとかは、す、と少しだけ手を引いた。

「触れない程度の距離で」

「ええっ?」

 思わず不満そうな声を出してしまう。
 が、それに反応するでもなく、せとかは萌実の指先ぎりぎりに、己の手を掲げる。

「これぐらいで。心を鎮めて、指先に神経を集中してください」

 まぁ触れてないほうが集中はできるけどさ、と心の中でぶちぶち文句を垂れながら、萌実はじっと指先を見た。

「あっ!」

 不意に指先に熱さを感じ、萌実は思わず手を引っ込めた。

「南野さん。そのまま、何かを放つイメージで、その手をあの天井の隅に向けてください」

「え? え?」

「早く」

 強く言われ、萌実はわけがわからないまま、言われた通り、えいっと天井に手を向けた。
 その途端、萌実の手から、ほわん、と何かが出た気がした。
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