結構な腕前で!
「おらおらおら~~!! ぬるいわ、貴様ら~~!!」

 道場内には黒せとみの怒鳴り声が響いている。
 道場の壁を蹴って、構えた扇を振り下ろすせとみは、心底楽しそうだ。

「何か出る幕なさそう……」

「まだ魔もいっぱいじゃないですからねぇ。下手に加わったら、僕らもせとみの餌食になりかねません」

 道場内を縦横無尽に駆け回りながら戦っているせとみから距離を取り、萌実とせとかは道場の入り口付近で様子を窺った。
 はるかとはるみは、せとみが撒き散らした煙の欠片を必死になって拾い集めて回っている。

「橘先輩たちは、攻撃はしないんですか?」

 そういえば、いつも二人は回収係のようだ。
 うっかり近寄って来た魔は叩き落としているが、あまり積極的に攻撃はしない。
 よくよく見れば、二人を狙った魔は襲い掛かる前に、ことごとくせとみに打ち落とされていた。

---何だ、せとみ先輩も、ほんとにちゃんと守ってるんだ---

 そう思うが、おや、と首を捻る。
 いや待て、萌実ははたしてせとみに助けられたことがあるか?
 守ると言った傍から、一瞬で離れたではないか。

 その後は萌実の傍につくこともなく、まして萌実の状態を気にするわけでもなく、一心不乱に戦っていた。
 いつでもそうではないか?

---私はせとか先輩がついててくれてるからか? それとも守りの力があるから大丈夫と思ってるの?---

 ぐるぐる考えていると、せとかが前を向いたまま、先の萌実の質問に答えた。

「はるかたちは、基本的に祓い専門だから。南野さんと同じような、守り系というか。僕らも多少あるんですけど、僕らは『北条』のほうが強いんです。はるかたちは、まんまミカンだから」

 何の知識もなく聞いたら何のこっちゃな説明だが、幸い萌実は初めにそれぞれの名前の由来を聞いている。
< 59 / 397 >

この作品をシェア

pagetop