結構な腕前で!
「攻撃は、こうやるんです」

 菓子きりの使い方を教えてくれたのだろう。
 が、手首を持ったまま大きく動かしたので、今萌実はせとかの腕の中だ。
 せとかの行動は、いろいろ心臓に悪い。

「じゃ、そういうことで」

 萌実を不用意にのぼせ上らせたと思ったら、次の瞬間には、せとかは離れてしまう。

「ま、早い話が、向かってくる魔に何かを打ち込めばいいんですよ」

 簡単に言って、せとかは茶匙で近くの煙を器用に絡め捕った。

「はるみ、壺」

「はいっ」

 はるみがさっと差し出した壺に、せとかが茶匙を突っ込む。
 しゅっという不思議な音がし、引き出したときには、茶匙には何もついていなかった。

「今のは?」

「生け捕りの強制送還です」

 今までは、何か散らばった煙の塊を壺に放り込んでいっていた。
 先のような妙な音はしなかったと思うのだが。

「それは一回退治しちゃってるからね」

「せとみは完全に退治してから回収するけど、せとかは直で壺行きなの」

「「まぁ回収する手間は省けるけどね~」」

 いつの間にやら二人揃っている。
 何とも不思議な双子である。

「はるかぁ! ぼさっとしてんじゃねーよっ!!」

 いきなり怒鳴り声がし、ふ、と影が落ちる。

「危ない」

 素早くせとかが、萌実を引き寄せて半回転した。
 せとかの背に、ばらばらと煙の欠片が降り注ぐ。

「きゃーっ」

「もーっ! 何すんのよーっ」

「「せとみの馬鹿ーーっ」」

 頭を押さえて、双子が喚く。

「おら、とっとと回収しねぇか」

 相変わらず扇を振るいながら、謝るでもなくせとみが怒鳴る。
 黒せとみは、ヤクザのようだ。
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