結構な腕前で!
「あ、せとか先輩。大丈夫ですか?」

 はた、と気付き、慌てて萌実はせとかの腕から逃れた。
 最近密着度合いが半端ない。

「大丈夫ですよ。何と言っても南野さんを手の内に入れているわけですから」

 だからその言い方やめてください、と萌実は赤くなるのだが、せとかの表情に変化はないのだ。
 この人は自分が何を口走っているのか、わかっているのだろうか。

「それにしても、南野さんは、やっぱり凄いですね。身体を鎧が覆ったようでした。僕の力も働いたんでしょうが、共鳴してより強くなったんでしょうね」

「え? さっきのも?」

「ええ。煙に直接触れるのは、やっぱりよろしくないでしょう? 僕らにも多少の守りの力はありますから、まぁ少々は大丈夫なんですけど。さっきは背に結構な魔を受けましたけど、内側から力が伝わってきましたよ。南野さんの力で、僕の守りの力が増幅されたのかな」

「えと。何も意識してなくても、自然と力は出るもんなんですか?」

「う~ん、あまりないですけど。いつも僕が誘導してたでしょう? あ、でも南野さん、さっき僕が危ない、とか思いました? だったら無意識に守ってくれたのかもしれません」

 う、と萌実は口籠った。
 それだろう。
 危ない、と思う暇はなかったが、せとかのためになりたいとは、常に思っている。
 それが出たのだろう。

「危ない、と思ったら、人は自然と守りに入りますからね。自然と守りの力が発揮されるんでしょう。南野さんの場合は元々強いので、傍にいる者全てが守られるってこと」

 いや、せとか先輩だからです、と心の中で付け足しておく。
 実際のところはわからないが、気にかけているのといないのとでは違うだろう。

 すぐに力が発動するのも、常にせとかを見ているからだ。
 萌実の心が常にせとかに向いているので、せとかにも簡単に力が及ぶのだと思う。

「南野さんは、攻撃の仕方をマスターしたほうがいいですね。力のほうは、大分慣れてきたようですし」

 乙女な考えに浸っていた萌実だったが、その相手はさっさと萌実を離すと、一旦懐に入れた手を引き抜いた。
 その手には、小さな菓子きりが何本か指に挟んである。
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